AYN ThorでSteamを動かす新しい選択肢「Armada」とは【2026年】
- 「Armada」はARM携帯機向けのSteamOS風Linux。AYN Thorは公式の動作確認済み機種
- 海外の検証では、Android上では動かなかったEA・Ubisoftのランチャーや『Just Cause 2』が動いた一方、『Forza Horizon 4』『Code Vein』は起動できなかった
- 導入にはブートローダー(ABL)の書き換えが必要で、失敗すると起動不能になるリスクあり。公式も「試作段階・自己責任」と明記
- 普段遊ぶならGameNative(Androidアプリ)で十分。GameNativeで動かないゲームがあり、リスクを理解した人だけArmadaを試す価値がある
Android携帯ゲーム機でSteamのPCゲームを遊ぶ方法といえば、これまではGameNativeやGameHubといったAndroidアプリが定番でした。そこに登場したのが、Thorなどの機種を「ミニSteam Deck」のように変えてしまうLinux「Armada」です。
海外ではすでに多くの検証動画が出ていて、「Androidでは動かなかったゲームが動いた」という報告も増えています。この記事では、Thorで実際にどこまで動くのか、GameNativeとどう違うのか、入れる前に知っておくべきリスクは何かを整理しました。
Armadaとは?ARM携帯機向けの「SteamOS風」Linux
Armadaは、Snapdragon搭載のAndroid携帯ゲーム機で動くLinuxです。起動するとそのままSteamのゲームモード(Steam Deckと同じ画面)が立ち上がるように作られています。開発者はvirtudude氏で、Fedoraをベースに、エミュレーター向けOS「ROCKNIX」の機種サポートを使っています。
公式のGitHubに書かれている主な中身は次のとおりです。
- ARM64版のSteam
- FEX(x86のゲームをARMで動かすための変換ソフト)
- CachyOS Proton 11(WindowsゲームをLinuxで動かすための互換レイヤー)
- KDEのデスクトップモード
- 電力・ファンの制御、ゲームごとのFEX/Proton設定(Deckyプラグイン)
- OTAアップデート(実験的)
ROCKNIXとの違いは、起動したときの画面です。ROCKNIXはエミュレーターのランチャー(EmulationStation)が立ち上がり、Steamは追加アプリという扱いです。Armadaは最初からSteamが立ち上がるので、PCゲームを遊ぶことが中心になります。
対応機種:AYN Thorは「動作確認済み」
2026年9月時点で、公式GitHubの対応表に載っている主な機種は次のとおりです(タップで開きます)。
対応機種の一覧(8機種)
| 機種 | SoC | 状態 |
|---|---|---|
| AYN Thor | SM8550(Snapdragon 8 Gen 2) | 動作確認済み |
| AYN Odin 2 / Odin 2 Mini / Odin 2 Portal | SM8550 | 動作確認済み |
| AYN Odin 3 | SM8750(Snapdragon 8 Elite) | 動作確認済み |
| Retroid Pocket 6 | SM8550 | 動作確認済み |
| AYANEO Pocket EVO / ACE / DS / DMG | SM8550 | 動作確認済み |
| AYANEO Pocket S2 | SM8650 | 動作確認済み |
| KONKR Pocket FIT(G3 Gen 3) | SM8650 | 動作確認済み |
| AYANEO Pocket S 2K | SM8550 | 未確認 |
9月のアップデートでRetroid Pocket 5なども対象に加わったと報じられています(retrohandhelds.gg)。最新の対応状況は必ず公式の対応表で確認してください。
実機検証で分かった「動くゲーム・動かないゲーム」
海外の検証:主要ランチャーが動く一方、DX12は苦手
まずは、YouTubeチャンネル「WiruDecko」がAYN Thorで大型アップデート後のArmadaを検証した動画の内容を整理します。
出典:WiruDecko「Armada OS MASSIVE Update! MORE PC Games Now Work on AYN Thor」
| ゲーム | 結果 | 検証者のコメント |
|---|---|---|
| Need for Speed Most Wanted(2012) | ◎ 快適 | EAアプリ経由で起動でき、快適に遊べた |
| Just Cause 2 | ○ 動作 | AndroidやROCKNIXでは動かなかったが、Armadaでは動いた |
| Far Cry 3 | △ 重い | Ubisoftのランチャー経由で起動。古いゲームのわりに動作は重め |
| GTA4 | △ 準備に時間 | Vulkanのシェーダー作成に1時間以上かかった |
| Forza Horizon 4 | × 起動後に落ちる | メニューまでは行くが、ゲームを始めると落ちる。DX12が原因の可能性。VKD3Dの設定を変えても直らず |
| Code Vein | × 動かない | — |
特に大きいのは、Ubisoft・EA・Microsoftなどの主要なPCゲームランチャーが動くようになった点です。検証者によると、これらのランチャーはAndroidやROCKNIXでは動かなかったとのことです。Steam以外のストアで買ったゲームを持っている人には、ここが一番の魅力になりそうです。
一方で、古いゲームが意外と重いこと(検証者はPhysXの影響を疑っていました)、DX12のゲームは苦手な傾向があること、最初の準備に時間がかかるゲームがあることには注意が必要です。
大型アップデートで増えた機能
- 外部モニター出力:動画の時点では「external display safe mode」を有効にする必要があった。9月のアップデートで、ゲームモードでも外部モニターが使えるようになったと報じられている
- クイック設定の強化:性能プリセット、CPU、電力・ファンのプロファイル、アンダークロック、ファンカーブを調整できる
- Armadaストア:ARM版のエミュレーターなどを入れられる
- Steam以外のゲームを追加するツール
9月下旬のアップデート:スリープ中の電池消費が最大50%減
2026年9月27日には、使い勝手を中心にしたアップデートが公開されました。Thorに関係しそうな変更は次のとおりです。
- スリープ中の電池消費を最大50%削減:Thorと同じSnapdragon 8 Gen 2(SM8550)のほか、8 Gen 3・8 Eliteの機種が対象。スリープ復帰後のWi-Fi再接続も速くなった
- 管理アプリ「Armada Tools」を追加:OSの更新と、1つ前のバージョンへの巻き戻しができる。更新チャンネル(Stable/Beta/Preview)の切り替えや、ゲームとセーブデータを残したままSteamを修復する機能もある
- Lossless Scalingのプラグインを0.12.8に更新
- ゲーム中にクイックアクセスメニューがゲームの裏側に隠れてしまう不具合を修正
「更新して調子が悪くなったら前のバージョンに戻せる」ようになったのは、試作段階のソフトとしては安心材料です。ただし、導入時にABLを書き換える必要がある点は変わっていません。
Valve公式のSteamOS ARM版を移植する動きも出てきた
ArmadaはFedoraベースの「SteamOS風」のLinuxですが、9月に入ってから、ValveがSteam Frame向けに作った公式のSteamOS(ARM版)を、Android携帯機へ移植するコミュニティ版も出てきました。
- SteamOS-ARM-SM8550:Thorと同じSM8550の機種向け。開発者が動作テストしたのはAYN Odin 2で、AYN Thorは対応機種の一覧に載っているものの「未テスト」の扱い(2026年9月28日時点)
- SteamOS ARM for Handhelds:Snapdragon 8 Gen 3機(AYANEO Pocket FIT、Pocket S2など)向け。9月27日のv1.2で、Lossless Scalingのフレーム生成(LSFG 2.0)をARMでそのまま動かせるようになった。Thorは対象外
どちらもArmadaと同じくROCKNIXのABLへの書き換えが前提なので、導入のリスクは変わりません。Armadaの開発チームは、Steam Frame版のSteamOSが出てもArmadaの方針は大きく変えないとしています。Thorで試すなら、現時点では動作確認済みのArmadaのほうが情報がそろっています。
GameNative(Android)とArmada、どっちを選ぶ?
Thorを持っていてPCゲームを遊びたい人が一番迷うのは、「今のGameNativeのままでいいのか、わざわざArmadaを入れるべきか」だと思います。仕組みとリスクの違いを図と表にまとめました。
| 比べる点 | GameNative(Androidアプリ) | Armada(Linux) |
|---|---|---|
| 導入の手間 | アプリを入れてログインするだけ | microSDへの書き込みとABLの書き換えが必要 |
| 端末へのリスク | ほぼなし(アプリを消せば元どおり) | ABLの書き間違いで起動しなくなる可能性あり。試作段階 |
| 仕組み | Android上でPCゲームを変換して動かす | OSごとLinuxに切り替えて、Steamを直接動かす |
| 対応ストア | Steam・Epic・GOG・Amazon | Steam(デスクトップモードでEA・Ubisoftなどのランチャーも動いた報告あり) |
| Androidとの行き来 | そのままAndroidアプリと併用できる | 再起動して切り替える(SD起動ならAndroidは残る) |
| Thorの2画面 | Androidの2画面機能がそのまま使える | 動画の時点では上の画面のみ。9月のアップデートで2画面が実験的に対応 |
| 開発状況 | 2026年8月にv1.2.0。動作報告の共有、Thorの電力制御にも対応 | 活発に更新中。ただし公式に「安定版ではない」と明記 |
- 普段遊ぶならGameNativeで十分。導入が簡単で、失敗しても端末は壊れません
- Armadaを試す価値があるのは、「GameNativeで動かないゲームがある」「EA・Ubisoftのゲームを遊びたい」「Linuxの操作に抵抗がない」人
- 試すなら、内部ストレージではなくmicroSDから起動する方法にとどめ、ABLのバックアップを必ず取ってから
私がArmadaを試していない理由:ABLをいじるのは高リスク
ABL(Android Bootloader)は、電源を入れたときに最初に動いて「どのOSを起動するか」を決めるプログラムです。PCでいえば、BIOS/UEFIやMBR(ブートローダー)にあたる部分だと考えるとイメージしやすいと思います。
- ふだん:電源ON → Boot ROM → ABL → Android
- Armada導入後:電源ON → Boot ROM → 書き換えたABL → microSDのLinux(Armada)
アプリの不具合なら消して入れ直せば済みますが、ここの書き換えに失敗するとAndroidすら起動しなくなり、PCにつないで復旧作業をすることになります。自分の端末でそのリスクを取るのは怖い、というのが正直なところです。正式版に近づいて導入の手順がもっと安全になったら、改めて検討するつもりです。
Armadaが怖い人の選択肢:GameNativeとストリーミング
「ThorでPCゲームを遊びたいけれど、ABLはいじりたくない」という人には、端末の起動部分に一切触れない方法が2つあります。
| 方法 | 向いている人 | 注意点 |
|---|---|---|
| GameNative(Androidアプリ) | Thor単体で、外出先でもSteamのゲームを遊びたい人 | 重いゲームや、DRMの強いゲームは動かないことがある |
| ストリーミング(Steam Link、Moonlightなど) | 自宅にゲーミングPCがあり、重い最新ゲームも遊びたい人 | ゲームを動かすのはPC側。PCの電源と安定したWi-Fiが必要で、外出先では通信環境に左右される |
私は普段、ThorでPCゲームを遊ぶときはGameNativeを使っています。GameNativeの導入手順や使ってみた感想は、別の記事で詳しくまとめる予定です。
AYN Thorで使うときの注意点
- microSDからの起動は遅め:SDに入れたゲームは読み込みが遅いという報告があります。カードはA2規格のものを選びましょう
- 初回起動は画面が真っ暗な時間がある:公式によると、SDから起動すると最大60秒ほど黒い画面が続きますが、正常な動作です
- 初期パスワードに注意:ユーザー名とパスワードは両方「armada」です。SSHを有効にする前に変更しましょう
導入の流れ(概要)とリスク
ここでは流れだけを紹介します。Thorは「Run script as Root」機能があるので、PCでADBのコマンドを打たずに作業できます。実際に入れるときは、必ず公式の手順(armadaos.dev)を最新の状態で確認してください。
- microSDに書き込む:Armadaのイメージを、Balena Etcherなどで64GB以上(A2規格推奨)のmicroSDに書き込む
- ABL用のファイルを本体にコピーする:
rocknix_ablフォルダを内部ストレージに置く。ThorはSnapdragon 8 Gen 2なのでSM8550のフォルダを使う - ABLをバックアップしてから書き換える:「設定 → Thor Settings → Run script as Root」から、まず
backup_abl.sh、次にflash_abl.shを実行する。バックアップされたabl_a.img/abl_b.imgは必ずPCにも保存する。SoCの種類を間違えると起動しなくなる - ABLメニューで起動先を選ぶ:VOL−を押しながら起動し、「Set Device Model」でAYN Thor、「Switch Boot Mode」でLinuxを選んでSTART
- Steamの初期設定:言語やWi-Fiを設定してSteamにログインする
よくある質問
Q. Armadaを入れるとAndroidは消えますか?
Q. AYN Thorの2画面は使えますか?
Q. Armadaは無料ですか?
- ArmadaはThorを「ミニSteam Deck」にするARM版のSteamOS風Linux
- EA・Ubisoftのランチャーが動く報告がある一方、DX12のゲームはまだ苦手
- ABLの書き換えが必要な試作段階のソフト。普段はGameNative、動かないゲームだけArmadaを検討するのが現実的
Armadaは更新のペースが速く、対応状況は数週間で変わります。新しい検証結果が出たら、この記事も更新していきます。携帯ゲーミングPC全体の選び方は携帯ゲーミングPCのおすすめ記事、Steam Deckとの違いはROG AllyとSteam Deckの比較記事で紹介しています。
出典
- WiruDecko「Armada OS MASSIVE Update! MORE PC Games Now Work on AYN Thor」(YouTube)
- Armada 公式GitHub / 公式サイト
- retrohandhelds.gg(2026年9月7日)
- retrohandhelds.gg「Armada's Latest Update is Here」(2026年9月27日)
- retrohandhelds.gg「SteamOS on Android Handhelds Just Got a Lot More Interesting」(2026年9月25日)
- retrohandhelds.gg「SteamOS Comes to More AYANEO Handhelds」(2026年9月27日)
- SteamOS-ARM-SM8550(GitHub)
- Joey's Retro Handhelds「Armada Setup Guide」
- GameNative 公式GitHub



